第二章 ―抜忍―

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屋敷の裏庭で 薪を割っている 男がいた。 鷹丸である。 細身だが 痩せすぎていない身体に 端正な顔をした鷹丸は もうすぐ訪れる 冬の準備をしていた。 割った薪を 小屋の方に運んでいると 里の見回りから戻ってきた月影が 声を掛けてきた。 「鷹丸。夕霧の様子は どうだ?」 それを聞き 鷹丸は クスッと笑った。 「そんなに心配なら 自分で確かめたら どうだ?」 「…それが出来ぬから 聞いているのではないか。」 少し 拗ねたように 口を尖らせた月影に 鷹丸は 持っていた薪を置き 言った。 「俺も いろいろと 忙しいのだ。他人(ひと)のことなど 構っては おれぬ。」 「冷たい奴だ…。」 呟いた月影を 鷹丸は 厳しく見つめた。 「そのようなことより 頭領に 報告はしたのか?」 その言葉に ムッとした顔をすると 月影は 強く言った。 「報告など…『本日も 異常無し!』それだけだ!」 フンッ!と 顔を背け 月影は 屋敷の方へ 駆けて行った。 その姿を見つめ 鷹丸は 軽く 息をついた。
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