第二章 ―抜忍―

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「馬鹿な真似は よせ!」 着物の帯を解き 着物を肩から落とした如月から 顔を背けて 月影は 怒鳴る。 「如月 よさないか!」 如月は 瞳を震わせ 月影を見た。 「…私では 嫌なのか?」 「そのようなことではない!そなたは 鷹丸が好きなのであろう?」 その言葉に 如月は 唇を震わせた。 「知って…いたのか?」 月影は 黙ったまま 頷いた。 フッと 笑みを浮かべると 如月は 寂しげに言った。 「良いではないか…。鷹丸は 鷹丸。…それとも 他の男に 汚された女では 不服か?」 一瞬 唇を噛んだが 月影は 静かに言う。 「そうではない。…一時的な感情で そのようなこと…。そなたは 私が それ程 軽い男だと 思っているのか?」 「月影…。」 如月の瞳から 涙が流れ 頬を伝って 落ちていった。 月影は 床に落ちた 如月の着物を手に持つと そっと 如月の肩にかけた。 「如月…。鷹丸は いい加減な男ではない。奴を信じてやれ。お前は 綺麗だもの…心配するな。」 潤んだ瞳で 月影を見つめると 如月は 月影の頬に 口付けをする。 「如月…。」 「…有り難う 月影。」 頬を染め そう言うと 如月は 帯を手に取り 駆けて行った。 月影は しばらくの間 茫然と 立ち尽くしていたが 口元に笑みを浮かべると 口付けされた頬を そっと 手のひらで撫でた。
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