第二章 ―抜忍―

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「私には…もう 耐えることが出来ませぬ。いったい…何を守り…何の為に 戦っているのか…分からぬのです!」 佐助は 閉じていた瞳を ゆっくりと開くと 両拳を握り締め 震えている 冬夜を見つめた。 「話しは…分かった。伊賀が そこまで 落ちぶれていたとは…。冬夜…随分 苦しい思いをしてきたな。」 優しい 佐助の言葉に 冬夜は 崩れるように伏せた。 「この甲賀にいても 命の保証は 出来ぬが…精神的には 楽であろう。そなたが 伊賀を捨て この甲賀に 命を賭けてくれると言うなら わしは 快く そなたを迎えよう。…そなた達も 異存は無いか?」 甲賀の忍び達を見渡し 佐助は言う。 皆は 黙ったまま 頷いて見せた。 それを見て 涙に濡れた顔を上げ 冬夜は 深々と 頭を下げた。 「有り難き お言葉。この冬夜 甲賀に 命を捧げます。」 「うむ。今日は もう良い。ゆっくりと 部屋で 養生するが良い。」 「はい…。」 佐助は 静かに立ち上がると 部屋を出て行く。
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