第二章 ―抜忍―

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その言葉を聞き 二人は プイッと 顔を背け 頬を赤くする。 そんな二人をチラリと見ると 夕霧は スッと 立ち上がった。 それを見て 鷹丸は 声をかけた。 「どうした 夕霧?」 「…気分が すぐれぬので 失礼する。」 そう言うと 夕霧は 部屋を出て行った。 鷹丸は 軽く息をつくと 冬夜に言った。 「夕霧も いい奴なのだが…少し 変わっているのだ。気を悪くしないでくれ。」 冬夜は 首を振ると 小さく言った。 「今まで 敵であった者を いきなり 仲間だと思えと言うのが 無理なこと。伊賀ならば すぐに 殺される。…彼の気持ちも 分かる。」 寂しく呟く冬夜に 月影は 優しく微笑んだ。 「甲賀は…出来ることならば 争いを起こしたくないと 思っている。戦いで得られるものは 何も無い。あるのは ただ 悲しみだけ…。夕霧も そのような中 生きてきたのだ。…心配しなくても良い。」 月影の言葉に 鷹丸も 深く頷いた。 『これが 今まで 戦ってきた敵か…?私は 戦ってきた相手を 間違っていたのかもしれぬ。』 甲賀忍び達の あまりにも優しく 暖かい心に 冬夜の頑なな思いは 溶けようとしていた。
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