第二章 ―抜忍―

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だが 所詮 無理なこと。 忍びである彼等に 安堵な生活など 訪れることはない。 ただ こうして 一時的に 肌の温もりを感じることが ささやかな幸せと言えよう。 「如月…。このような戦いが いつまでも 続くとは 俺には思えぬ。いつか 戦いが終わったら 一緒になろう。それは いつのことだか 分からぬが…待っていてくれるか?」 「待つ…。何年 何十年でも…。たとえ この時代になれなくても また 人として 女として 生まれ変わり お前と一緒になる。お前が 私を必要としている間 私は いつまでも 待ち続ける。」 「…この戦いの時代が 憎い。愛する お前一人 幸せに出来ぬ 己が 情けない。」 「こうして お前の温もりを感じ 同じ時代を生きていける。…それだけで 十分 幸せだ。」 愛おしく 如月を抱き締め 鷹丸は この一瞬 忍びであることを忘れた。 悲しき 二人の定め。 せめて 普通の人として 光りの世界に 生まれていたならば 少しは 苦しみも 楽になれただろう。 明日をも知れぬ 我が身を呪いながら わずかな時を 愛し合う二人。 この二人の幸福が 少しでも 長く続くことを 心から祈る。 第二章―抜忍―<完>
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