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ドカッとベンチに座り、肩で息をする。
「はぁ、はぁ……どーなってるんだよマジで……気味が悪すぎるぜ」
うつむいた顔から汗が滴れ、地面へ染みを作る。
夏の気温のなか走ったのも原因だが、この気味の悪さも発汗を加速させている要因になっているようだ。
「……ちくしょう」
ぼそりと呟いてベンチを立つ。
まだ肩は上下しているが、息の荒さは少しだけ治まっていた。
ふらふらとした足取りで再び歩き始める忍。
その横合い、茂みの奥からガサリと物音がした。
忍は驚愕の表情で、茂みから距離を取って身体をそちらへと向けた。
人影が無く、色も音も消えたような世界で聞こえた「物音」の意味は何か。
自分以外、他者の存在の可能性。
もしくは……。
忍の顔に浮かぶ汗は先程とは完全に違う、純粋な冷や汗となっていた。
「ケケッ、やっと見つけた」
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