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夏休み初日。
有体に言って、仁惣 忍の一日は平々凡々な物であった。
学生にありがちな休みに入ったばかりでやる事もなく惰眠を貪り、怠惰に過ごし、機械的に食事を取り、そうして刻々と時だけは悠々と、しかし確実に進んでいく。
一言で言うならば「だらけた一日」を過ごし、時刻はまもなく明日へと移り変わろうとしていた。
「まぁ、休みに入ったからって劇的に何かが変わるわけでもなし」
自室のベッドの上に寝転び、独り言を呟きながらケータイをいじっていた。
「まぁ、んなもんは漫画とかラノベの世界だよなぁ」
そこでゴロンと寝返りをうち、窓の方へ身体を向けた瞬間――
「なっ?」
――世界から色彩が消えた。
この時点で午前0時丁度。
まだ暑くなるとテレビが告げているが、それでも十分過ぎるほどの熱帯夜の日の出来事であった。
――所変わり、街中某所。
「ケケッ、早々にコレで一人目」
色の無い空間に一人たたずむ色彩を帯びた人影。
本来目立つはずの状況なのに、その場にただ一つ色を放つ存在は不思議な程に周囲に溶け込み、微塵も違和感を感じさせない。
「……当たりじゃねぇようだな。ケケッ、まぁ時間はある、消去法でいつかブチ当たるだろうさ」
喉に引っ掛かったような独特な、人の嫌悪を買うような笑い声も、誰に聞こえるでもなく反響し消えていく。
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