ある悪魔の提案

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 その空間は薄暗く、かつ広い場所だった。  しかしながら、その広さは群がる「何か」達によって殆ど埋め尽くされており、寧ろ狭いくらいにも感じられる。  しかし、大多数が「群」にしか見えないこの部屋の中に「個」として確認できる影が6つ。  「群」の先頭に1つ。  それと向かい合いように4つ。  そのさらに奥に1つ。  先頭にいる影が発してるのは明らかな敵意。  いや、後ろの「群」もそれぞれ敵意、はたまた殺意を発して前を見据えていた。  対する5つの影の内、前の4つはその敵意、殺意に身構え、まるで後ろにいる影を守るようにしている。  しかし、一番後ろの影は身構えるどころか自然体で立っていた。  威圧的に、  包容的に、  挑発的に、  不敵に、  素朴であり、  荘厳であり、  ゆらりと立ち、  鋭く前を見据え、  笑いながら、  全ての敵意殺意を受け、  そこに、ただただ立っていた。  そして、ゆらりと前へ歩を進める。  足音もなく、ゆっくり、しかし確実に少しずつ進む。  誰も動けず、ただその影だけが動き、ついに4つの前にいた影よりも前にでる。  それでもまだ歩みを止めず、ついには先頭の影の目の前にまで来て、そこで歩を止めた。  そしてそこで、  威圧的に、  包容的に、  挑発的に、  不敵に、  素朴であり、  荘厳であり、  しかしながら澄んだ声を発した ――なら、ゲームをしよう。 ――と。
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