ある人間の日常

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「さて、そろそろ出るか」  時間は少し進み、彼の家。  学校は掃除とホームルームのみの午前で解散であったので、現在の自宅であるアパートに帰宅後、昼食。  そしてそれも終わり、また外出するために身仕度を整えている。 「あー、学校近くのファミレスでとか何とか言ってたな。店の名前知らねーけど、帰る方と逆だし」  ブツブツと独り言を呟きながら、ヘルメットを掴み外に出る。  そして誰もいなくなった家のドアの鍵をかける。  彼の家は母のみの片親。所謂シングルマザーというものであった。  その母も働きに出ていて、朝出るのは早く、帰ってくるのは遅いので、結果、鍵の開閉は彼の仕事となっていた。 「さてと」  二階建アパートの最上階の自宅から階段を使って下へ降り、アパート利用者用の駐車スペースの端に置いてある銀色のシートが被っている物体に向けて彼は歩を進める。  そんな中、ふと上からドアの開く音がした。 「あれ、また出るのかい?少年」  二階から彼へそう言葉をかけた女性は、シニカルな笑みを顔に張り付けて、下にいる彼に目を向けている。  おそらく腰に届くか届かないかくらいの髪をポニーテールにまとめ、ジャージにTシャツ、履き物は多分便所サンダルという何とも色気のない出で立ちであった。 「少年って、小学校からずっとその呼び方のまんまですよね、日向さん」 「少年は、いつまで経っても少年だよ、アタシからしたらね」  くっくっく、と喉を鳴らすような笑い方をしながら、彼女は笑みをもっと深いものにした。 「まぁ、別にいーですけど。てか日向さん、仕事は?」 「前にも言っただろう?在宅でできる仕事だと」 「あれ、言ってましたっけ?」  少し思案したのち、結局考えるのを止めたようで、日向から視線を外し、再びシートの方へ進みだした。
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