ある人間の日常

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「そういえば、どこにいくんだい?」  彼が丁度シートの前に着いたと同時くらいに、先ほどと変わらぬ場所から日向は下へと口を開いた。 「なんか、クラスのヤツからお疲れ様会的なものやるから来いって電話入ったんで、そこに」 「成る程、そーいえば明日から夏休みとか言ってたな、君は」  会話をしながら、被せてあったシートを外す。  中から出てきたのは一台のフルカウルのバイクであった。 「言いましたっけ?そんなこと」 「言ってたさ、先週くらいに」  鍵を刺し、回してハンドルロックを解除し、ONまで一気に回す。  そして車体を起こしてサイドスタンドを戻した後、その場で少し押して、方向転換させる。 「いいねぇー、何かと理由をつけて集まり、特に意味もなく時間を消費する。若いねぇ、青春だねぇ、甘酸っぱいねぇ」  日向は少し昔を懐かしむような微笑みでそう言った。 「なんか年寄り臭いですね……」 「今なんか言った!?」 「イエ、ナニモ」  バイクにまたがり、ヘルメットを被る。  そしてセルスイッチを押すと、程なくして小気味いい音と共にエンジンが点火した。 「まぁ、気を付けて行ってらっしゃい。変な事すんじゃないよー、夏の過ち的なねー」 「別に何も無いっすよ、そんなフラグもまったく無いですし。んじゃ行ってきます」  日向へ軽く手を振り、クラッチを握りギアを入れる。  程なくして、彼は目的地に向かってバイクを走らせ始めた。
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