1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
結果から言えば特に変わったことは何も起こらなかった。
バイクを走らせ、着いた先のファミレスで彼は既にいた級友達とダベり、無為で無意義で無価値、そんな時間を過ごしていた。
そして、日は陰り夕刻から夜へと移ろうかという時間にて、誰からともなく移動の提案が上がった。
所謂とこの「二次会」と言ったようなところであろう。
「きっと大人達に言わせたら、この一件無意味、無価値の様な時間が後々の大切な思い出に――とか言うのかねぇ……」
彼がバイクに鍵をさしながら、一人そう呟いた。
彼自身は次の場所に行くつもりはなく、帰る旨を伝え、皆と別れてきた。
「帰るって言ったとき、なんか一人少し淋しそうな残念そうな顔したのがいたが……名前忘れた」
まぁ、いいか。と思考を中断させ、メットを被り、跨る。
そしてエンジンをかけようとスターターボタンに手をかけようとした瞬間――
「っ!」
一瞬の頭痛と
「……あ?」
色彩の反転した、音の無い世界。
――しかし、それが見えたのも一瞬。一つ瞬きをした頃には元の世界に戻っていた。
「……疲れてんのかねぇ、幻覚っぽいのまで見えたし……」
今起きた事柄をあまり深く気には留めず。
親指に力を少し込め、程なくして点火したエンジンを噴かし、帰宅への道へと走りだした。
この時点をもって、本人は気付いてはいなかったが、彼の――
――仁惣 忍(にそう しのぶ)日常は幕を閉じ。
そして、
無意識に、
無慈悲に、
無機質かつ、
無感動に。
非日常の幕が上がった。
最初のコメントを投稿しよう!