ある人間の日常

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 結果から言えば特に変わったことは何も起こらなかった。  バイクを走らせ、着いた先のファミレスで彼は既にいた級友達とダベり、無為で無意義で無価値、そんな時間を過ごしていた。  そして、日は陰り夕刻から夜へと移ろうかという時間にて、誰からともなく移動の提案が上がった。  所謂とこの「二次会」と言ったようなところであろう。 「きっと大人達に言わせたら、この一件無意味、無価値の様な時間が後々の大切な思い出に――とか言うのかねぇ……」  彼がバイクに鍵をさしながら、一人そう呟いた。  彼自身は次の場所に行くつもりはなく、帰る旨を伝え、皆と別れてきた。 「帰るって言ったとき、なんか一人少し淋しそうな残念そうな顔したのがいたが……名前忘れた」  まぁ、いいか。と思考を中断させ、メットを被り、跨る。  そしてエンジンをかけようとスターターボタンに手をかけようとした瞬間―― 「っ!」  一瞬の頭痛と 「……あ?」  色彩の反転した、音の無い世界。 ――しかし、それが見えたのも一瞬。一つ瞬きをした頃には元の世界に戻っていた。 「……疲れてんのかねぇ、幻覚っぽいのまで見えたし……」  今起きた事柄をあまり深く気には留めず。  親指に力を少し込め、程なくして点火したエンジンを噴かし、帰宅への道へと走りだした。  この時点をもって、本人は気付いてはいなかったが、彼の―― ――仁惣 忍(にそう しのぶ)日常は幕を閉じ。  そして、  無意識に、  無慈悲に、  無機質かつ、  無感動に。  非日常の幕が上がった。
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