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「はぁ……はぁ……はぁ」
闇の中、必死に走る人影が一つ。
まるで何かに怯えるように、何かから逃げるように、ひたすら走る。
「……はぁ……ちくっ……しょう……なんだっ……これは!……」
軽いパニックを起こしてるような言動。
しかし身体は酸素を欲しており、その言葉も切れ切れに発せられていた。
しかし、その言葉は誰に届くでもなく、闇に溶けていった。
「……はぁ……っ!」
突き当たりを右に曲がった瞬間に急ブレーキで止まる。
目の前には、道の真ん中に佇む人影が一つ。
それに怯えるように、後退ろうと試みるも身体は言うことを訊かない。
「ケケッ、なかなか追い掛けるのには苦労したよ。なんせまだ慣れない身体だし」
そう言いながら一歩、また一歩、ゆっくりだが確実に近づいてくる。
「さて」
目の前。
そこまで来られても一向に動けない。
恐怖に呑まれて、状況に呑まれて、雰囲気に呑まれて、相手に呑まれてしまっている。
そして目の前の人影。
それはクイッと口角を上げ、不気味な、不快感しか感じない「悪魔」のような笑みを顔に張りつけ、口を開く。
「ケケッ。さぁ、鬼ごっこは終わりだよ。人間」
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