開戦

2/6

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
「はぁ……はぁ……はぁ」  闇の中、必死に走る人影が一つ。  まるで何かに怯えるように、何かから逃げるように、ひたすら走る。 「……はぁ……ちくっ……しょう……なんだっ……これは!……」  軽いパニックを起こしてるような言動。  しかし身体は酸素を欲しており、その言葉も切れ切れに発せられていた。  しかし、その言葉は誰に届くでもなく、闇に溶けていった。 「……はぁ……っ!」  突き当たりを右に曲がった瞬間に急ブレーキで止まる。  目の前には、道の真ん中に佇む人影が一つ。  それに怯えるように、後退ろうと試みるも身体は言うことを訊かない。 「ケケッ、なかなか追い掛けるのには苦労したよ。なんせまだ慣れない身体だし」  そう言いながら一歩、また一歩、ゆっくりだが確実に近づいてくる。 「さて」  目の前。  そこまで来られても一向に動けない。  恐怖に呑まれて、状況に呑まれて、雰囲気に呑まれて、相手に呑まれてしまっている。  そして目の前の人影。  それはクイッと口角を上げ、不気味な、不快感しか感じない「悪魔」のような笑みを顔に張りつけ、口を開く。 「ケケッ。さぁ、鬼ごっこは終わりだよ。人間」
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加