2.幼なじみの男の子

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 隆への苛立ちも、意地になっていたことも、親にぶつけた心無い言葉や態度も全部、涙と一緒に流れ出た。  ひとしきり泣いて、自分の中の嵐が過ぎ去ると、昌はすぐに居間へ向かい、久しぶりに両親の顔を見て食事した。  泣いていたことに気付いていただろうに見ない振りをして、ずっと言わなかった「いただきます」「おいしかった」「ごちそうさま」の言葉に、何も言わずただ微笑み返してくれてまた泣きそうになった。  思春期という一つの節目を終え、再び元の生活に戻ると、隆は前ほど家に来ることはなくなった。  母か美晴が何かを言ったのかもしれないし、隆が自分で何かを感じとったのかもしれない。  だが、来る回数は減っても、隆は相変わらず昌を全身で慕っていたので、昌も精一杯の愛情をもって隆を可愛がっていた。
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