2.幼なじみの男の子

6/9
前へ
/224ページ
次へ
 季節は巡り、昌は高校卒業と同時に一人暮らしを始めた。  通うことになったコンピューター・ビジネス専門学校は、同県内だが端と端に位置しているため、交通費と移動時間を計算した結果、家を出ることに決めたのだ。  泣きじゃくる隆を「毎月帰ってくるから」と宥め、後ろ髪を引かれる思いで実家を後にし、二年間学校に通った。  その間、約束通り帰ってこれたのは最初の半年だけで、試験勉強やバイトで時間と体力を吸い取られながら、卒業する頃には半年に一回のペースになっていた。  初めの頃は、帰ってくると昌の姿を見つけるや否や、一目散に駆け寄り抱きついてきて離れなかった隆だったが、次第に顔を見せることもなくなっていった。  ちょうど多感な年頃の男の子に、たまにしか帰ってこれない自分がしてあげられることはほとんどない。  寂しさを感じながらも、あれだけ懐いてくれていた隆の変わり様に昌の方が戸惑い、話しかけそびれたまま時は過ぎてゆく。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1067人が本棚に入れています
本棚に追加