被告人 有水美奈

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ナイフから父の指紋が摘出された。父は男からナイフを渡されたと話したがナイフの指紋認証で父の指紋しか摘出されなかった。 男は捕まることなく、父の裁判の日、有罪になった。 決定的な証拠もないまま、無罪を主張した父の声も虚しく、裁判は終わった。 泣き崩れる私達家族は神に見放された、その時本当に神を呪った。 父が刑務所に入って1ヶ月が過ぎ、面談を許可され、父に会いに行った。 「美奈、父さん犯人の顔見たんだ」 私は顔を近づけた。 「犯人知ってるの?」 「父さんの裁判をした裁判官だ」 私は絶句した。この時この世の狂いに気がついた。人を裁き、正しい道を示す裁判官が、人を刺し、間違った道を示す悪人で、その間違った道の上を父は歩かされている。
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