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「ふむ、確かに“クリスタルドロップ”だね。ご苦労さん、ツバメ。あたしが持ち主には返しておくよ」
「うん、よろしく~」
ツバメは先ほど盗んだお宝を目の前の老婆に渡した。
周りには綺麗な装飾品から不気味な人形まで、いろんなものが所狭しと並んでいる。
そこは店だった。
表通りから外れた裏道にひっそりと佇むそこの看板には【占い屋・ルー】と書かれている。
「今日も傑作だったわ、藤元刑事。よくもまあ、飽きずにこんな私を追えるわね」
くすくすとツバメが笑うと、老婆は呆れた表情を作る。
「あんたはほんとに、性格が正反対だねえ」
「ルーさんだって表では占いなんてやってるけど、裏では私に怪盗なんてやらせてるじゃない」
「それは同意の上だろう?あんただって楽しんでるじゃないかい。それにあたしがしてんのは悪いことじゃないと思ってるからねえ」
「……まあ、私も悪いとは思ってないけどね」
ルーは表向きはただの占い師だ。しかし裏の顔は【取り返し屋】。
不正に奪われた品物を取り返すといった仕事をしている。
今まではずっとルー一人でやってきたが、占いの客としてやってきたツバメの悩みを解決するための一石二鳥の策として怪盗をやってみないかともちかけた。
「それじゃ、私はそろそろ“籠”に戻るわ」
「あんたも難儀だねえ」
それにツバメは苦笑を返すと、店をあとにした。
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