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「優!」
「あ、母さん!」
電話をするとすぐに駆け付けてくれた母親に、優は簡単に事情を説明する。
「そうなの……。いいわ、そのあやめちゃんをうちに連れて行きましょう。目を覚ませば連絡先を聞けばいいし、朝まで目が覚めないようなら学校に電話したらいいわ」
母親があっさりと承諾してくれて、優はほっと息を吐く。
「うん、それじゃあ連れてくるよ。母さんは病院の玄関に車持ってきて?」
「わかった」
そうして優は家にあやめを連れて帰った。
「…………ん……」
あやめはふっと目を開ける。
「けほっ……」
少し咳き込んで、少しずつ自分の状況を理解する。
見覚えのない部屋。
メガネがないためぼんやりしているが、自分の部屋でないことは確かだ。
「どこ……?」
あやめはそろりとベッドから降りると、扉に向かう。
もしかしたら誘拐かもしれない。幼い頃に何回か経験がある。
あやめは出来るだけ静かに、ゆっくりと扉を開けた。
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