7/8
前へ
/20ページ
次へ
「優!」 「あ、母さん!」 電話をするとすぐに駆け付けてくれた母親に、優は簡単に事情を説明する。 「そうなの……。いいわ、そのあやめちゃんをうちに連れて行きましょう。目を覚ませば連絡先を聞けばいいし、朝まで目が覚めないようなら学校に電話したらいいわ」 母親があっさりと承諾してくれて、優はほっと息を吐く。 「うん、それじゃあ連れてくるよ。母さんは病院の玄関に車持ってきて?」 「わかった」 そうして優は家にあやめを連れて帰った。 「…………ん……」 あやめはふっと目を開ける。 「けほっ……」 少し咳き込んで、少しずつ自分の状況を理解する。 見覚えのない部屋。 メガネがないためぼんやりしているが、自分の部屋でないことは確かだ。 「どこ……?」 あやめはそろりとベッドから降りると、扉に向かう。 もしかしたら誘拐かもしれない。幼い頃に何回か経験がある。 あやめは出来るだけ静かに、ゆっくりと扉を開けた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加