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ビーッ ビーッ ビーッ……
警報器が鳴り響く。
「いたぞ!あっちだ!」
バタバタと焦る足音が複数。
それをはるか後ろに聞きながら、彼女は振り向いた。
「今夜もお宝は頂戴しました」
凛と透き通るような声。
黒く艶やかな長い髪は高い位置で一つにまとめられ、頭には黒い羽根のついた黒い小さなハットがちょこんと置かれている。
鼻から下は黒い布で覆われ、垣間見える瞳は青い。
その手には美しい宝石の飾られた指輪があった。
「無能な警察さんたち、じゃーねー♪」
彼女はひらりと窓の外に身を躍らせる。
「まっ……!」
警察たちは青ざめた。なにせここは超高層ビルの最上階だからだ。
数人の警察官が窓から下をのぞく。はるか下は遠すぎて、人がゴマのように小さく見えるが、少なくとも死体らしきものは見当たらなかった。
「くそっ!また逃がしたか!」
一人、青い警察の制服ではなくスーツを着た男が悔しげにつぶやいた。
40代ほどの彼は、いわゆる刑事である。
彼はずっと『ツバメ』を追っていた。しかし今まで捕まえられたことは一度もない。
「藤元刑事!あの、これからどうしましょう……」
「あーくそ、また始末書書かなきゃなあ。おまえらは撤収だ。被害者の楠会長には俺が謝罪しとく」
「はい!了解しました!」
藤元刑事の元へ来た警官は指示に従って撤収を始める。
「『ツバメ』……。声や体つきからして、20代かそこらの若い女怪盗。ずば抜けた身体能力と、手品なのか超能力なのかよくわからない不思議な力で警察を煙にまき、未だ捕まったことはおろか顔すら割れてねえ……。ったく、女一人に俺らは何やってんだか」
はあ、と大きくため息をついて藤元刑事はきびすをかえした。
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