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あやめは机に向かってすらすらと問題を解いていた。時々手が止まるとすぐに参考書を開き、またすぐにシャーペンを走らせる。
「……………あやめ」
後ろから声をかけられたが、あやめはまるで予想していたかのように動じることなく声の主を振り返った。
「こんばんは、お父様。何かご用ですか?」
にっこりと綺麗に、あやめは笑いかける。
「……ああ、今日は帰りが遅かったからな。何かあったのか?お前にしては珍しい」
あやめの父は心配そうに眉を下げている。そんな父にあやめは苦笑した。
「大丈夫ですよ。……私としたことが、生徒会室で居眠りをしてしまって。事故とかそのようなものではないので心配しないで下さい」
「それならいいんだが……あまり無理はするな?兄さんの期待に応えようとしてくれるのは頼もしい限りだが、お前自身のほうが私は大事だからな。がんばれなくなったらいつでも私から兄さんに……」
「大丈夫ですってお父様。伯父様の期待には私の出来る範囲で応えようと思っています。無理なんて、していませんよ」
あやめが安心させるように笑うと、父はいくらか安心したように表情を和らげて部屋を出て行った。
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