第一章

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窓の向こうでは5年前と余り変わっていない景色が過ぎていく。 この県でたった一つの村と呼ばれるここが私の生まれた場所。 久々に帰った家は家電が何個か新調されただけで何も変わっていなかった。 私の部屋もそのままだ。 「お帰り。疲れたやろ?」 そう言って出迎えてくれた父さんの方が酷い顔をしていた。 お通夜お葬式と慌ただしく進んでいきいつの間にか終わったという感じで私は何か出来るわけもなくただ突っ立っているだけだった。 知っている顔に知らない顔。 でも誰もが悲しい顔をしていた。 テレビを見てるかの様に無表情で行き交う人をただ見ていた私は周りからはどんな風に映っているんだろう。 感想を一言で言えば呆気ない。 母さんと最後のお別れをして数時間後には小さな白い欠片になって…本当にこれが母さんなの?って実感もわかず泣く事もなかった私は冷たい人間だろうか。
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