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'源氏名どうする?'
カルナに入店が決まったあの日、店長にそう言われ私は頭を捻った。
一緒の日に入店したエイミと絵美は決めてきていたのかすぐに思いついたのか…あっさり決めた様子だったけど私はピンと来るものが出てこなかった。
'好きな芸能人とかいない?憧れてるモデルさんとか?'
'憧れ'そう言われ私は'沙奈にします'と答えた。
芸能人でも好きな歌手でもない。
お姉ちゃんの名前を使ったんだ。
不思議だった。
名前を変えただけで私は明るい沙奈を演じることができた。
化粧に服装を変え話し方まで変えて自分、そしてお姉ちゃんとも違う人間、沙奈になりきったんだ。
「さっちゃん!」
煙草をくわえようとした時そう呼ばれ顔を上げると彼女達は「久しぶり」と言った。
中高一緒だった椎香と蘭。
上京して暫くは連絡を取り合っていたけれど日に日にそれは少なくなって今ではアドレスに登録されているだけだ。
「大丈夫?」
何が?と言いかけた口を閉じ頷いた。
「さっちゃんなんか雰囲気変わったね。綺麗になった」
だって変わる為にここを出たんだもん。
やはり心の言葉を呑み込んで「そう?」と首を傾げると三人の間に変な沈黙が走って目が合えばどちらともなく逸らした。
一分もない時間だったけど気まずくて居心地が悪い。
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