第一章

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「…分かった。すぐそっちに…」 私の言葉を遮って部屋のチャイムが響く。 「おいどぅした?」 「…うぅん大丈夫」 「…仕事なんやろ?無理せんでもこっちにはお姉ちゃんおるしな」 懐かしい方言が胸を痛くした。 「そうはいかないよ…すぐ向かうから。また電話する」 携帯を切った後部屋の電話でフロントにかけるとタイミング良く店長が出た。 「店長…早退したいんだけど」 「えっ沙奈ちゃんどぅしたの?何かあった?」 この店は女の子に優しいし扱いも丁寧だ。 店長も従業員の男も。 「困ったなぁ濱口さん御来店なんだよ‥」 濱口さんなんだ… 彼は太客の一人だ。 何も話さない私に店長は小さく息を吐く。 「大丈夫?とりあえずご案内するからね?後で話聞くから頑張ってね」 電話は静かに切れ私はドアの前で佇む。 店長に事情を話せば早退を認めてもらえたと思う。 でも私は苦しんでいる母さんより90分をダブルで入れた濱口さんを取った。 3時間。 実家まで帰れる時間。 最低…私最低だ…。
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