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君は、他人に触れた事があるかい?」
喋った。黒い夜に、
黒い闇になった男が、
喋った。(思ってたよりも若い声で)
男「君は人に触れた事が無いだろう。
物理的にも、精神的にも。
自分から触れないばかりか、差し伸べられた、救いのその手さえも拒むのだろう。
他人から距離を置いて、君にしか見えない壁で囲い、誰からも理解されない殻に篭るのだろう?
そのくせ、人一倍に触れ合いを求めていて、だけどそれが恐ろしくて、他の奴等、例えば、同じクラスの生徒達だとかを妬んでいるのだろう?
こんなにも辛くて厳しい世界が、堪らなく嫌で、だけど自分で自分を殺す事すらできなくて、情けなくて、みっともないんだろう?
誰かに触れてしまったら、それだけで、触れた事も無いのに、たったのそれだけで壊れてしまいそうで怖いんだろう?他人が、そして、自分が。
何故君はそんな人間になってしまったか分かるかい?他の人と何処が違うのか、君は分かっているのかい?
それは、とても簡単な事なんだ。
それは、それはね、君が気付いてしまったからなんだ。
自分には何も無いと。
ほとんどの人は君と同じように、何も無い人間なんだ。
だけどそれに気付かずにいたり、気付いても、そんな事は無いと、自分自身に嘘を吐いて過ごしているんだ。
君はそれが出来なかっただけなんだよ。
たったのそれっぽっちなんだ。
君は、自分には何も無いと知ってしまったから、只々生きているだけだから、只々息をしているだけだから、只々繰り返しているだけだから、只々怯えているだけだから、只々足掻き、苦しみ、堪え難い絶望から抜け出したいと、望んでいるだけだから、君は、君は、
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