5人が本棚に入れています
本棚に追加
クラクション。衝撃。体が飛ぶ。自転車が変形する。通行人が息を飲む。目を丸くする。体が落ちる。トラックが停止する。あちこちで悲鳴があがる。
とまあ、そんな一部始終を当の撥ねられた本人である俺はぼけーっと眺めていた。
どこから? と聞かれれば答えようがない。俺だってわからん。つーか、なんで俺が俺を見ているのか教えくれ。
あー、意味がわからん。
状況を整理してみよう。
受験真っ盛りの俺、黒澤進也。中三。今日の日付は確か8月19日。火曜日。
いつものように塾へ行き、勉強し、友達と別れる。うん、ここまでに異変はないな。
で、チャリで坂下って。丁度信号が青になったんだよな。そのまま交差点を横断。しようとしたら、以下冒頭に戻る。
つまりは、だ。
塾帰りの中学三年生が不幸にも交差点でトラックに撥ねられた訳だな。ちゃんと信号守ったぞ俺。
あらら、首がイケナイ方向いてる。どこの軟体生物だよってツッコミたい所だが、その光景を見た俺は今更状況を理解しパニックに陥る。
ちょっと冷静さを取り戻したときまず思ったのは、
俺、死ぬの?
それから何度泣いたかわからんね。
救急車が来て、病院行って、親が来て、仲の良い友達が来て。みんな泣いてやがんの。俺ももらい泣き。
お医者さんが首振って、またみんな泣いて、ついでに俺も泣いて。涙出ないけど。心が泣いてんだよ心が。
通夜とか葬式とかやって、体焼かれて。
そっからの記憶は、ない。
気付いたらあの交差点にいた。
最初のコメントを投稿しよう!