おまけ

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「緋くん」 「ん?」 あれ、碧君。 もうすぐ収録始まるよ? いつまでそんな寝癖、髪に付けてるの。 「貴方、後ろの髪跳ねてるよ?早く直して貰っておいで」 「あ、ほんと?…ま、それは後でしてもらうからいい」 後、て。 だから、もうすぐ始まるんだってば。 「明日何の日か覚えてる?」 「え…、明日?」 なんだろう。 何かの記念日? 祝日…でもないし、別に休日でもない。 かと言って、俺達に関わる何かの日、て訳でもないし(それなら俺のほうがよく覚えてる) 「…ちょっと、分かんない。ごめん、何?」 「ふふん。初めての日、だよ」 「初めての日?」 ふふん、て。可愛い、碧君。 ていうか。 「初めての日、て何の?」 そう。 思い当たるものがないんだけど。 こう言ってはなんだが、初めての日なら全部覚えている。 付き合った初めての日、キスをした日、…まあ、下世話なところでは初めて一つになった日も。 あと他に、何があった? 「不意打ちじゃない日」 「…え、?」 なんだそりゃ? 「不意打ちじゃない、て…なにそれ?」 また新たな彼語録が。 「覚えてないの?…ま、そりゃそうか」 「えっ、だって…、あの、碧君もう少し詳しく教えて?」 なんだか、ちょっと寂しそうな顔が胸に痛くて。 「あのな、…」 彼が話してる間、必死に思い出そうとした。 「…で、キスする時に、『あれ不意打ちだったでしょ』て緋くんが言ってさ」 「ああ…」 なんとな~く、思い出した。 そういや俺、想い出に残るようなキスがしたい、なんつって、碧君を誘ったんだよなー。あの時。 「めちゃくちゃドキドキしたんだ、俺。…だからあれが俺のなかでは初めての日、なの」 想い出に残したい、なんて俺が思ってたのに。 その自分が忘れてて、碧君の想い出になっていた、なんて。 「……もう一つあるよ、碧君」 「なに?」
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