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「告白以外で、初めて『好き』て言ってくれた日」
そうなんだ。
あの、俺の名前を何度も呼んでくれたあの後。
碧君は小さな小さな声で。
「緋くん好きだ、て言ってくれたんだよね?キスしながら、ね?」
「…覚えてねえや」
耳まで真っ赤な彼がそっぽをむいて、隣へ向く。
あの時から、なにも。
貴方も、俺も変わってないね。
自分勝手に進みがちな、貴方を愛し続ける俺と。
極度の照れ屋で、それをあまり口にする事はないけれど、深い愛情をひたむきに俺にくれる碧君。
あの時は結局、その後は何もしなかった。
キスだけで、伝え合うものが手に負えなくて。未熟だった。俺達。
「また、」
あんなキスをしようか、碧君。
「ふ…そうだな、緋くん」
緋くん。
優しい呼び方も、あの時のまま。
「今夜、あのホテルで乾杯でもするか」
照れた横顔が、そのままメイク室へと歩いて行く。
「予約しとくよ、碧君」
「おう」
頷いた後ろ髪が、ぴょんと。
嬉しそうに、軽やかに跳ねた。
fin.
次の日顔が浮腫んで、大笑いされました。
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