あなたの全部を…

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「…お腹すいた?」 「うん、ちょっとだけ。」 「ホテルまで、我慢できる?…速水さん、予約する時に、食事も、予約したんだって。フルコースだよ。」 「フルコース?!」 「僕は、食べたことないなぁ…郁美は?」 「小さなお店で、ランチコースなら、あるけど…本格的なのは、ないよ。」 「…じゃあ、二人して初体験だね!」 「ああ…ホテルの本格的なフルコースかぁ…想像したら、お腹すいてきた。」 「あははは…郁美ったら、食いしん坊だなぁ。」 「もう!意地悪!」 ちょっと、緊張が解れた。 速水さんに、もらった地図を見ながら、ホテルへ向かう。 途中には、郁美が、絶対に好きそうな雑貨屋とか、外から見てるだけでも、ドキドキするくらい高そうでお洒落な店とか、飽きない工夫がされてた。 きっと、これは、千秋さんの仕業だ。 僕は、嬉しくなった。 その勢いで、ホテルに着いた僕達は、…その前で、立ち尽くした。 「…嘘だろ。本当に、ここなの?」 外資系のホテルをよく知らない僕でも、ここは、他と格が違うって、わかる…。 「…い、行くよ!」 郁美の手を握り直して、フロントに向かった…。 「…あの、今日、速水の名前で、予約してると思うんですが。」 「ご予約の速水様ですね。…はい、お聞きしております。 お泊りは、小川様で2名様と、速水様からお伺いしておりますが、よろしかったですか。」 「…あ、はい。」 「恐れ入りますが、ここにご宿泊者のご署名を、お願いしております。」 「…僕が、全部書いても、構いませんか?」 「…どうぞ。」 小川和樹っと…どうしようか…ごくっ…ええい!ままよ!…小川…郁美 「はい!これで、いいですか?」 「…結構でございます。 こちら、ルームキーと、なっております。 ご案内いたしますので、どうぞ。 ありがとうございます。ごゆっくり、おくつろぎくださいませ。」 フロント係が、深く頭を下げる。
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