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奥の大人達は、谷口さんと昴さんが、付き合ってることを、ネタに盛り上がってる。
「…お前らも、来い!」
速水さんに、呼ばれて輪に入る。
「谷口のやつ、横山に、一目惚れして、その場で、口説いたんだぞ。で、振られたんだよな。」
「速水!古傷えぐるなよ!」
「…ふぅん、古傷なの?」
「速水…お前、なんで俺には、いつも意地悪なんだよ?!」
「…そんなの、からかうと面白いからに、決まってんじゃん。」
「マジで怒んぞ!」
大人の癖に、ガキみたいなことしてるよ、この二人は…。
「美晴さん、本当のことなんだから…速水さんに、当たらないで。」
「昴!お前…速水の味方すんのか?」
「…だって、普通、あんな告白ないでしょ。
あの時は、からかわれてるか、この人、めちゃくちゃ遊び人だと、本気で、思ったんだから…。
お願いですから、速水さんも、あんまり、美晴さんのこと、からかって遊ばないでください!」
「…悪い、悪い。わかったから、そんな目で、睨むなよ、横山。」
「はいはいはい。みなさん、お料理出来ましたよ。
彰は、馬鹿なことばっかり、やってないで、言い出しっぺなんだから、飲み物の用意くらいして頂戴!」
「はい…了解しました。
千秋には、逆らえないなぁ…。」
ポリポリと、頭をかきながら返事をする速水さんは、なんか、可愛かった。
千秋さんと速水さんのやり取りが、なんかほのぼのしてて、可笑しい。
「…なあ、小川、速水さんて、千秋さんには、いつもあんななのか?」
「…そう、千秋さん限定。
速水さん、唯一の弱点だな、千秋さんは。
但し、仕事は別だよ。速水さん、仕事に関しては、たとえ、千秋さんでも、容赦ないから…。」
仲良く並んで、支度をする二人を、見ながら、僕らも、あんな風になりたいなって、改めて思った。
そして、未熟な僕らを、ここにいる人達は、温かい目で見つめ、手を差し延べてくれるんだろうな。
居心地のいい人達の作る、輪の中で、僕は、ちょっぴり幸福を噛み締めていた。
[Fin]
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