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しかし、その腕が振り下ろされることはなかった。
まぁ、そうなるよな。
「やめろっ!!」
霧羅咲の腕は、後ろから斉藤によって掴まれていた。
しばらく、霧羅咲は苦しそうに暴れていたが、やがて諦め、手に握っていたものを落とす。
シャーペン。
ただの文房具が使い方によって、紛れもない武器へと変わるんだから怖い。
そうして、霧羅咲はだらんと力を抜き、下を向く。
斉藤も手を離す。
周りから見れば、霧羅咲は俯き、うなだれ、屍のように見えるかもしれない。
が、霧羅咲が俯いている直線上には俺の顔がある。
さっきとかわらず、目はガン開きのまま俺を睨んでいる。
そして、微かに口を動かし消えてしまいそうな声で、
「あ……たが……ころ……た。」
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