2章

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あぁ、メガネを掛けないで欲しかった。 なんで、くまが悪化してんだよ。 こんだけの量を書くには、1日、2日じゃ終わらねぇよな。 それに仕事もあるから、寝る間も惜しんで。 あん時、早く帰ったのもこれを書くため? やべぇ、泣けてきた。 「五口、喜んでくれたみたいね。本当によかったわ。」 口に手をあて、鼻をすすっている。 目も真っ赤だ。 「お母さん、ありがとう。」 言葉を重ねると、かえって軽くなってしまいそうだったので、一言にしておいた。 「その言葉が聞けて嬉しいわ。」 立ち上がり、仕事があるから行くねと言って、ドアの方へ向かう。 突然、歩を止め、振り返る。 「退院おめでとう。そして、ハッピーバースデー。おめでとう。」 お母さんは、部屋を出て行った。 開いていたページには、俺のことが書いてあった。 布津 五口 15才 19××年8月3日生まれ …………………… 今日は8月3日、夏休みの真っ只中。 カーテンを開ける。 太陽の光が、部屋を満たした。 目をギュッとつぶって、両腕を上に伸ばす。 そして、大きくあくびをして、目をこする。 「やっと、太陽の下を歩ける。」
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