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「そうか……もう、行くのか」
白銀の世界。そこは一面雪に覆われていて、ほかの地域では『ナツ』と呼ばれている時期でさえ、雪が止むことはない。
そのなかで、全身を黒装束で包んだ男が、対面している少女を見下ろし、言葉をかけた。
「うん、行く」
少女は、あどけない顔立ちとは裏腹に、しっかりとした声で返す。しかしそこは幼い女の子。緊張からか表情はかたく、ほころぶ様子がない。
男はそんな彼女をみて、心のうちでそっと微笑んだ。しかしそれを表に出すことはしない。彼は彼女の保護者であり、これから旅立つ彼女を甘やかしてはいけない……そういった念が、彼にはあるからだ。
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