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小田はリビングでテレビを見ている。
由宇はキッチンで手際良く、夕飯の支度を進めていた。
プランターから、バジルを採って細かく刻む。ガーリックとオリーブオイルをあえ、ジェノベーゼを作り、別の鍋ではカリフラワーを裏ごしした、ポタージュを煮込む。
誰かの為に料理を作る事は、由宇にとって至福の一時だった。
「由宇………」
後ろから声を掛けられ、由宇は心臓が飛び出そうなくらい驚いた。
振り向くと、そこには…
「亜義………。」
作品が仕上がるまでは、絶対にアトリエ
からは出てこないはず。風呂にもはいらず、ほとんど睡眠もとらない。放っておくと食事も取らないので、毎日由宇が食べやすいものを差し入れていた。
「亜義…、どうしたの?」
問い掛ける由宇に、ゆっくり近付く亜義。
………うまく描けてないのかな。
由宇が動かずにいると、亜義はそのまま由宇の背中から抱き締めた。
「………誰かいるの?」
料理の様子を見て、亜義が尋ねる。
玄関から直接キッチンに入ると、リビングにいる小田には気づかない。
「小田さんだよ。亜義に、とっておきの話を持ってきてくれたんだ。小田さんから直接聞くと………!」
最後まで言い終わらないうちに、亜義の唇が由宇の口をふさぐ。
「………ん…!…亜…義……!」
やっとの事で亜義の体を押し離す由宇。
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