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「では、座って」
「はい、失礼します」
私は椅子に越しかけた。
面接官との目線が丁度良い位置になる。
「いやー今日は暖かいね」
でた。
大抵の面接官は面接前に雑談から入ることが多い。
こうすることで、緊張をほぐそうとしているのだ。
対して緊張もしてないけど、私はこういうわざとらしい話は得意だから、掴みを得るために利用させてもらうことにしよう。
「はい、例年になく暖かい陽気ですね」
「なんでも、今年の夏は暑くなるらしいね。
地球温暖化の影響とかなんとか……まあ、“ここ”では関係無 いことだけどね。ははは」
“ここ”?
この会社内ってことだろうか。
エコ観点に着目し、クールビズ導入は勿論のこと……、とかいう会社のキャッチコピーでもあるのかしら。
「……ふふ、緊張は取れましたか?」
「え? あ…はい。大丈夫です」
緊張……? 私が?
そんな風に見えたのだろうか。今まで面接で緊急したことなんて無いし、こんなことを言われたことも無い。
確かに私にとって今日の面接は今までの面接とは違う。決戦の場だ。
私自身知らない間に体が強張ってたのかもしれない。
どっちにしても、それが取れたのなら早く始めて欲しい。
「さて、では面接を始めましょうか」
面接官は、ある一枚の紙を片手にそう言った。
そうそう。早く始めましょう。
私は、きちんと面接官の目を見据えた。
スウッと、張り詰めた緊張感が鼻を掠った。
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