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教室の窓からは橙色の陽光が差し込んでいた。
自分の正面、窓の前に立つ『おれ』の姿を、まるで後光を背負っている仏様のようだと、『おまえ』は思った。
後光にしては何だか頼りない、曖昧な夕陽ではあったが、それがかえってこの男に似合っている。
この前の休みに、河川敷の広場で、『おれ』の友達を集めて三角ベースをやったのを思い出した。
『おれ』は部活をしているのに、バットがボールに掠りもしなかった。帰宅部の自分は、二球ほど川の中に打ち込んだけれど。
――おっと、危ない。
思わず口元が弛みそうになるのを誤魔化し、『おまえ』は頭を掻いた。無意識にその手は、しばらく放置しっぱなしだった髪の毛を弄り始める。
そういえばさっき『おれ』に「女みてぇな髪型しやがって」と言われてしまった。たしかに伸びすぎたかもしれない。
今度の週末は予定を変更してみようか? なんて。
――まあ、いいや。
『おまえ』は、長くて優男のような髪型とは裏腹な男らしい冷静沈着さで、憮然と黙り込んだままで。
そして、口を開く――。
『おれ』の最後の問いかけに対して『おまえ』が言葉を返し、新たな物語が始まり、この物語は終わる。
fin
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