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俺の生まれ育った村は、名前も忘れ去られるような貧しい村。食べ物も少なく、みんな今日を生きる事に精一杯だった。
俺の両親は飢えに負けないくらいとても明るい両親で、自分達の食べる量を減らして、その分俺に分けてくれていた。
――ある日の朝、俺は母の悲鳴で跳び起きた。いつも大声をあげる事のなかった母。だから、尋常ではないと気付き、急いで母の元に向かったんだ。
俺が母の元へ駆け寄ると、泣き崩れる母の前に横たわる父の姿があった。母の呼び声に反応しない父に歩み寄り、俺はソッと父の身体に触れた。青白く、冷たくなった父を起こそうと何度も呼び掛けるが返事はなく、父は二度と目を開ける事はなかった。
ある日、母に頼まれ今にも干上がりそうな井戸から水を汲んで帰ると、母が玄関前で倒れているのを見つけた。俺は急いで駆け寄り母に触れ顔を見ると、母はあの時の父と同じように顔は青白く、触れた肌は冷たかった。その時の俺は、まだ5歳だった。
両親が死んだ事も、一人になった俺の事も、哀れむ村人など一人もいなかった。寧ろ、食いぶち減らしで喜んでいた。貧しい村なのだから仕方のない事なのだろう。だけど、幼過ぎた俺は悲しくて、村人を怨むしかなかった。
両親が死んでしまってから、誰かが俺の食べる物を恵んでくれるわけもなく、食べ物を求め俺は一人村を出た。村を出たからといって、街までの道を知っている訳もなく、ただひたすら知らない道を進むだけだった。だが、適当に道を進んだのに、どうやら街にちゃんとたどり着けたみたいだ。
俺のいた村とは違い、街には人が大勢いて賑わっていた。そんなに距離は離れていないのに、なんでこうまで違うのだろうと思いつつ街を歩く。
歩いている間、俺のお腹が鳴り続く。もうとっくに限界は超えているのだろう。
そして、俺はある事に気がついた。街に来ても……お金がない……。
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