第一章

3/11
前へ
/112ページ
次へ
   気付いた途端、俺を誘い込むように辺りから旨そうな匂いが漂って来る。その匂いを辿って俺は歩き出す。  そして、暫く歩き続けるとそれらしき店の前に辿り着いた。店の前に立ち尽くしていた俺が、往来の邪魔になっていたのには気付かず、道行く人が俺にぶつかり、その衝撃と共に俺は意識を手放した。             ・           ・           ・           ・ 「…………ぃ……………ぉぃっ………………おいっ!!」  誰かが、俺を揺り起こす。 (……………俺のこと起こしてんのは………誰だろう……)  未だ覚醒しない意識の中で、俺は朧気にその声を聞いていた。           ・           ・           ・           ・ ヴァチィッ!!!! と、俺は勢いよく目を開けた。 「おぉ!!気づいた?!こんな所に倒れているから驚いたよ!!どうしたんだい??」  少し身なりの良さそうな兄ちゃんが俺を覗き込む。 (……誰だろう…この人……)  心配そうに俺の顔を覗き込むその人の顔を、俺はマジマジと見つめた。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加