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「……ん??私の顔に何かついているかぃ??」
その人の顔に穴でも開いてしまいそうなほど見つめていた俺に、その人は優しい微笑みを向けてくれた。焦った俺は否定をしようと首を横に振る。
「いえっ!!なんでもな……
“ぐぅーっ”
……い??」
究極に空かしていた俺の腹が素直な音をたてた。それから数秒沈黙が続き、俺は恥ずかしくてその人の顔もまともに見れず俯いた。すると――
「………っははははははっ!!なんだ、腹が減っていたのか??」
そう言うと、その人は俺に手を差し延べてきた。そして、俺は戸惑いながらもその手を取った。
初めて逢ったその人の手を、戸惑いもなく掴んだのは、その人の笑顔がとても優しかったから。両親以外から初めて向けられた笑顔がとても嬉しかったから。
「君、名前は??」
その人は、優しく俺に名を聞いた。その優しさに俺は、素直に名前を答える。
「……俺の名前は……昴流」
『こんなに優しい笑顔の人は、いい人に違いない』子供ながらにそう思った。
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