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女王陛下の遺体は、見つからなかった。
粉々になった世界の破片の中から、魂の欠片を集めて、再構築するのにエルフの力を借りた。
エルフはかねてより不老不死と復活に関する研究をしており、様々な種族、様々な状況・状態における、実践的技術に詳しかった。
「愛しい方の面影、性格、言動、可能な限り思い出してください」
姫とはそのような関係ではないが、反論も疲れるので、魂の処置は錬金術士任せだ。
ハイハイ、と頷き、姫…女王陛下の人魂だけは形を取り戻した。
生け贄に攫った竜の眷属の娘は、手足を祭壇に縛りつけられ、さるぐつわを噛まされている。
祭壇の上でずっと唸って暴れている。
栗毛のスラリとした娘であるが、魔法騎士の婚約者よりも、余程腕が立った。
気性も根性も、女にしておくのが惜しいくらいだ。
フリギアで扇動役になった竜騎士は、聖弓に射られてしまった。
だが、エルフが死体を転移術で回収してくれていた。
女神の末裔は、相変わらずこちらを都合良く利用する意図しか感じられない。
しかし、エルフはまだ、対等に協力する態度が見られる。
手早く済ませよう。
復活の聖水を、生け贄に振りかける。
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