<4>索敵

5/9
前へ
/257ページ
次へ
家々の屋上から、石畳に落ちたイリヤは起き上がらない。 服がまだ燃えている。 魔術師は、障壁を作らない。 モリガンが気合と共に、回転様に横殴りに魔術師の胴を払った。 小さい魔法盾が数個現れ、聖剣の直撃を防いだ。 そこに、数多の鉄製の変哲ない矢が集まった。 モリガンが何か叫んだようだ。 上段に振りかぶる。 矢がいくつもハリネズミみたいに刺さった魔術師が、額から半分に割けた。 「終わった」 ロスが擦れた声で叫んだ。 マリアは遠視を止め、部屋を出た。 「バートランド!!!  終わりましてよ!!」 階段を全力で駆け上がり、屋上に顔を出すと、燕尾服のエルフはバイオリンを構えて最初の一音を奏でた。 情感を湛えた導入部から、次第にテンポが上がり、堂々とした葬送行進曲が演奏される。 マリアは、一枚の絵のようである美貌の演奏家を眺めた。 メロディは次第に熱を帯び、四方の空から数千の光がバートランド目指して飛んで来た。 「関係ねぇそこらの亡霊どもまで、集まってきやがった!」 言いつつ、空を見るノーベルの口調は愉快そうだ。 バイオリン弾きは、舞踏曲に替えた。
/257ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加