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家々の屋上から、石畳に落ちたイリヤは起き上がらない。
服がまだ燃えている。
魔術師は、障壁を作らない。
モリガンが気合と共に、回転様に横殴りに魔術師の胴を払った。
小さい魔法盾が数個現れ、聖剣の直撃を防いだ。
そこに、数多の鉄製の変哲ない矢が集まった。
モリガンが何か叫んだようだ。
上段に振りかぶる。
矢がいくつもハリネズミみたいに刺さった魔術師が、額から半分に割けた。
「終わった」
ロスが擦れた声で叫んだ。
マリアは遠視を止め、部屋を出た。
「バートランド!!!
終わりましてよ!!」
階段を全力で駆け上がり、屋上に顔を出すと、燕尾服のエルフはバイオリンを構えて最初の一音を奏でた。
情感を湛えた導入部から、次第にテンポが上がり、堂々とした葬送行進曲が演奏される。
マリアは、一枚の絵のようである美貌の演奏家を眺めた。
メロディは次第に熱を帯び、四方の空から数千の光がバートランド目指して飛んで来た。
「関係ねぇそこらの亡霊どもまで、集まってきやがった!」
言いつつ、空を見るノーベルの口調は愉快そうだ。
バイオリン弾きは、舞踏曲に替えた。
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