<4>索敵

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カラフルな光の球体たちは、エルフのバイオリン弾きを囲んで回りだした。 「葬列のロンド…」 薄暗い、雨の空で人魂たちはフワフワ踊る。 次第に渦になり、天に昇る虹色の柱になった。 楽師を中心に、暗紫の円陣が浮かび上がる。 静かに、ノーベルは円陣から退いた。 演奏の手を止め、音楽で降霊術を行うバートランドは叫んだ。 「さあ、往くべき楽園へ。偉大なる神々が待っているだろう」 魔方陣の中心で両手に楽器を持ったまま天を仰ぐ。 彷徨える魂たち、ウィル=オー=ウィスプたちは、魔方陣に急降下した。 「ぎゃああああ…」 陶酔気味だったエルフが悲鳴を上げた。 「こーわーいぃー~~!!!!!」 「頑張れ、バート!!!」 ノーベルが励ます。 人魂たちは、大瀑布の如く、垂直に魔方陣に雪崩込んで行く。 「ひぃえええぇぇ  マーマーンン~~ッ」 キラッ… 最後の一柱が消えると、雨雲が切れて太陽が顔を見せると同時だった。 神秘的な景観の中、真っ青な顔の降霊師が、バンザイで硬直している。 「がんばったぞ、うん、がんばった」 無精髭が、感受性の強すぎるナルシストの肩を揺すって労った。
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