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「何も強制的に撤退させなくたって…」
「辞めちまえ!!!」
ノーベルは北の城塞都市ガルトブルグ警備隊長室に正座していた。
一部始終を遠視していた呪術師マリアは、仁王立ちでキレている。
「…マリア、標的の索敵は?」
警備隊長ブラッグに静かなバリトンで促された。
マリアは、怒り肩で乱暴に大魔鏡の封印札を剥がし、背筋を伸ばし直して念じた。
再び、魔鏡に映像が映る。
《…マリア、か?》
イリヤの心の声を読み取ったマリアは、念じ返した。
《そうですわ。標的を探しますから、しばらくお待ちくださいませ、イリヤ様》
「助かりますが、用心してください…」
イリヤが立ち止まった場所は、石畳の廊下の辻だった。
東西南北、どちらも同じくらいの距離で壁に行き当たるように見える。
イリヤは先ほどの階は、全て探し、さらに下の階に降りていた。
(さっきの念話は、ブラッグたちには聞こえてないのだろうな…)
《ですわー》
「びっくりしたっ!!」
独りで驚き、再三イリヤは肉眼で辺りを窺った。
《マリア、気を付けてください。敵には女神の末裔が…》
《いましたわ》
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