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マリアから送られるイメージは途中で途切れたが、充分だった。
イリヤは、方向を定めると、廊下の壁に向かい瞬時に気を練り、大地の魔力を借りて正拳突きを繰り出した。
緑の円陣を纏い、魔術でパワーアップした拳は岩壁を砕いた。
有翼の女神の加護による治療術以外で、イリヤが使える魔法はこれしかない。
崩れ落ちる壁の向こう、標的は、竪琴を抱えた錬金術師は、水色の魔方陣を展開している。
(逃がさん…)
言葉に出たか出なかったか。
ベテラン格闘家は、齢数百年と思しき魔力に満ちたエルフにタックルで組み付いた。
魔法が中断された。
勢いのまま、部屋の奥に2人は転がり、雑多な椅子や棚に衝突した。
エルフが呻いた。
この機と思ったイリヤが、エルフを抑えこもうとすると、謎の力に弾き跳ばされた。
もんどり打って目を凝らすと、エルフの体を水色の光が覆っている。
エルフは投げ出された竪琴を急ぎ拾い、アルペジオを奏でた。
「…少し調律が狂ったな」
しかし、床の魔方陣から、フルフェイス、フルアーマーの騎士が一体現れた。
頭に羽飾りがある。
イリヤは、起き上がった。
首をブルッと振り、構えた。
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