12人が本棚に入れています
本棚に追加
「マーズさん、警備隊長室にある、私のスケッチブックを持って来て下さいますか」
ロスに右眼に包帯を巻かれたマリアは、小さい声で言った。
マーズは、ランプに入った人魂と、熱心に会話しているフィリアの様子を見た。
毒師で薬師、というか、看護師のロスは、手術して取り出したマリアの右眼を、聖水で呪術的に処置している。
王の眼はブラッグが踏み潰したそうだから、あちらから呪われても被るのはブラッグだ。
天才ブラッグなら、呪われてもびくともしないだろう。
「お願いですわ」
再度頼まれ、マーズ少年は了解した。
隊長室を覗くと、ブラッグは新たに魔方陣を調整していた。
「どうした」
「スケッチブックを…」
「あそこだ」
視線で示された先、隊長席の机上にあった。
「どうも…」
マーズは、はしっこくスケッチブックを取って部屋から出た。
マリアに渡すと、最後に描かれたページを開くよう言われた。
「……コレ…」
スケッチブックに描かれた魔方陣の習作。
全体は読めないが、所々は読める。
「手紙を書いてくださいまし」
マーズはマリアの口元に耳を寄せ、内職話で伝言を聞き取った。
最初のコメントを投稿しよう!