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エルフは逃げなかった。
召喚した騎士を竪琴で操り、イリヤを倒そうとして来る。
倒して、屍人形か、幽霊戦士として使うつもりかもしれない。
(エルフではなく、背後の御方が…)
エルフは、あくまでも異種族の魂を召喚し、仮の肉体を与える召喚の力を持つのみだ。
(最初に竜騎士を召喚したのは、奴。だが、襲撃は失敗し、竜騎士の仮の肉体は霧散した。
眠れる女王の世界で、迷い込んだフリギアの王子を誘拐しようとした魔術師は、アリスンが作った魔方陣を通じて此方の世界へ来て、実体を持った。
それを、背後の御方に、察知され、捕らえられたんだ)
女神の直系と傍系では、霊的な知覚も魔力の強さも段違いだ。
イリヤは、不老不死技術の汎用化を目指す錬金術士と、狂信者集団の指導者の利害が結び付く先を想像した。
「それこそ、魔王の再来だ…」
召喚された虚ろな騎士は、次々と剣を繰り出し斬りかかって来る。
「…もう10歳若ければ…
いや、20歳…」
さすがに息が切れてきた。
「くっそ~~!!!」
肉眼で山城を隅から隅まで探しきったアリスンは、兄夫婦をとうとう見つけられず、屋上で叫んでいた。
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