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兄たちは諦めて、イリヤの援護に戻ろうとしたアリスンは、空に何かが光るのに気付いた。
「…魔方陣?」
突如開いたそれは、城に古代文字の影を落とした。
アリスンの真上、展開した神々しい円盤から、巨大な蛇が頭を出した。
「ヨルムンガンド…?」
蛇神は、ゆっくり魔方陣から絞り出され、山岳一帯を覆って宙にたゆとう。
「いっ…にい…さん!?」
アリスンは全力で走りだした。
イリヤがエルフと戦っていた部屋に向かう途中から、自分の周囲に乳白色の光が回り始めた。
「イェド兄さん…」
妹を出口に現れた、銀髪の修道士は、盲目となった魔女の手を引いていた。
「マリアさんの眼は、後で両目とも再生させますから」
妹の動揺を先に制し、女神の末裔直系の男は続けた。
「正体を顕したヨルムは、陸地が苦手です。
早く、カルディナが操る錬金術士の所へ案内してください」
アリスンは、素早く紅の魔方陣を展開し、数階分をすり抜けて目的の階に降りた。
水色の翼で、落下の衝撃を和らげ、兄と友に配慮する。
「タキトゥスとシェーラは、見つかりましたわ。
でも、女神直系には逃げられましたの」
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