0人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
厄介なことに、
今年の春は短かった。
まだ5月だというのに
テレビは梅雨入りしたと報道し、
母親ゆずりのくせっ毛をもつ私はうんざりしながら下駄箱で雨が止むのを、または小降りになるのを待っていた。
しかし待てども雨は止む気配はない。
本当に今日はついてない。
雨で髪型はアレだし、
いつもは擦り寄ってくる近所の猫に引っ掛かれるし、数学のミニテストの存在を忘れ、結果に自信はない。
おまけにこの雨で帰れない、と来たもんだ。
私が何かしたか!…と信じてもいない神様とやらに文句をぶつけてみたが、
何かが変わるはずもなく、
雨はただ淡々と降り続けた。
「倫?」
名前を呼ばれ、振り向くとクラスメートの…確か恵津子ちゃんがいた。
「何やってんの?」
「見ての通り」
「ああ、雨宿り?」
「うん」
そっちは、と聞くと恵津子ちゃんが嬉しそうに笑った。
「私も、雨宿り。あ、でもでも、私や倫だけじゃなくて、クラスに結構傘持ってきてない子がいてさ、それで暇つぶしにゲームしないかってことになって」
…ゲーム、とな。
何をやるんだろうか、とぼんやりと考えをめぐらせる。無難にカードゲームだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!