都にて

2/4
前へ
/9ページ
次へ
 佐久は、ようやくといった調子で、一息ついた。数十日もかけて、やっとのことで都入りを果たしたのである。  しかも、周りにいるのは大王の使いだという、見知らぬ男ばかりだと状況であったのだ。常に気を張り続けなければいけなかったのである。  しかし、都に着いたからとて、ゆっくりと過ごせるわけではない。第一佐久は姉を探しに来たのだ。休んでいる場合でもない。  昨晩は都に泊まった。更に、今日の朝早く出仕し、あれやこれやと引っ張りまわされ、自分の部屋を案内されたのが夕食間近のこの時間であった。  自分の部屋と言えど、落ち着けるというわけではない。むしろ、その正反対に近かった。  都の華やかさは、田舎のそれとはまるで違う。道沿いの露店の多さ、騒がしさ。人の視線の煩わしさ。  山間の静かさに慣れた身としては、苦痛でしかなかった。普段と違う空気に肩身の狭さを感じてしまうのだ。  そして、更に、今は都の中心地、大王もこの中のどこかにいるという宮の中にいるのである。  案内されたこの場所は、田舎娘にとって見慣れないどころではない、何に使うのかすら分からない物で溢れていた。  自らの部屋に居ても、それは同じである。更に、身の回りの道具の値段を考えることも憚られた。  考えてしまった瞬間、汚したり壊したりするのが怖くて、何も出来なくなるだろうと佐久は考えたのである。  そして、それは、あながち間違いでもないと思われた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加