十冊目。

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「まあ今考えるべき議題は亜莉栖の反抗期について、だよね。何が気に食わないの?五歳で反抗期だなんて思春期もびっくりだよ」 「思春期はびっくりするかは置いておいて出会ったのが五年前なだけでしょう?馬鹿ね、マスター。この馬鹿」 二回言われた。 脱力感に見舞われつつ出会った頃を思い出す。 秋の終わり、冬の始まりの季節。 仕事で偶然立ち寄ったとある書店で一冊の本を手にとり見つめる一人の少女。 「何考えてるの?」 「ん…、出会った頃を思い出してたんだよ…懐かしいね」 不思議そうに見つめる彼女に対し静かにそう告げる。 「まあ反抗期だとかはもういいやー、あ、よくないか…でもまあ、話しのつまみに昔話に花を咲かせるのも悪くないかと…どう?」 「…、構わないけれど、言い方が親父くさいわ」 俺の言葉に数回瞬きをした後、彼女はそう告げて目元を細め小さく笑った。
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