1 可能性

2/13
前へ
/240ページ
次へ
 墓地は大抵町はずれにあるものだが、このシシロも例外ではない。  国境でもある高い壁の真下に、打ち捨てられたように墓地と墓守の掘っ立て小屋がある。この墓地が見捨てられているのは、常に塀の向こうにいる敵と隣り合わせにあることだった。いつ攻撃を仕掛けられてもおかしくないという、危険に誰も冒険したくないのだ。  そんな墓地に、最近幽霊が出るという。  噂の発端は墓地の住人である墓守だが、その墓守もある日死んでしまった。  死因は心臓発作だという。彼は相当年寄りだったから、寿命だったのかもしれない。  しかし、それで幽霊騒動は終わらなかった。  深夜、街中で幽霊を見たという人が多発したのである。  その幽霊は、真っ白なドレスを着て、振り返ると大きな目が金色に光るのだという。  更に、街中で悪魔らしき姿までもが現れ、この町は荒れ果てようとしていた。  町人はこの町を守る【生命の木】が枯れ始めていることに気がついていたが、策が見つからずに頭を抱えていた。  物語は、この危機的状況にある町に、一人の旅人が訪れるところから始まる。
/240ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加