105人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんなところに何をしに来たんだ? こんな国境には戦争しかないんだぞ、ぼっちゃん」
「それこそ余計なお世話というものだよ、おっさん」
尻の下がゆらゆらと危なげに揺れるのを、どうにかやり過ごしながら、青年はそれより、と言った。
「こっちが聞きたい。俺に何の用だ?」
「こんな辺境にくる奴の狙いは、一つしかないだろう? 今なら安くしておくぜ」
青年はしたり顔で怪しげな物言いをする男に、話にならないとばかりに肩を竦めた。
「馬鹿かい、あんたは。金なんて俺は持ち合わせてないよ。俺はこの町が、どんな状態なのか聞きたいだけなんだがね」
「どうして俺が話さないといけないんだ? 見返りもないのに?」
男は青年が客ではないことにようやく気づくと、途端に興味をなくしてぞんざいに言い放った。
「教えてくれれば、この砂嵐を止められるかもしれない、と言ったら?」
青年は勿論、大真面目に言った。
が、相手も勿論笑い飛ばした。
「お前こそ、寝言を言うのもほどほどにしろよ! お前なんか家に入れるんじゃなかった、出てけ!」
「まぁまぁ」
二度目の雷に慣れてきたのか、青年は少し笑顔になった。そして、今度は居直った彼の方が、さらりと言った。
「こんなことが冗談で言えないだろ。まぁ、暇潰しだと思って話してくれないか?」
「誰が暇だって? さっさと出て行け!」
自分から呼んでおいて、身勝手もいいところだ。
だが、青年は何も言わずにその部屋を出た。
最初のコメントを投稿しよう!