1 可能性

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「こんなところに何をしに来たんだ? こんな国境には戦争しかないんだぞ、ぼっちゃん」 「それこそ余計なお世話というものだよ、おっさん」  尻の下がゆらゆらと危なげに揺れるのを、どうにかやり過ごしながら、青年はそれより、と言った。 「こっちが聞きたい。俺に何の用だ?」 「こんな辺境にくる奴の狙いは、一つしかないだろう? 今なら安くしておくぜ」  青年はしたり顔で怪しげな物言いをする男に、話にならないとばかりに肩を竦めた。 「馬鹿かい、あんたは。金なんて俺は持ち合わせてないよ。俺はこの町が、どんな状態なのか聞きたいだけなんだがね」 「どうして俺が話さないといけないんだ? 見返りもないのに?」  男は青年が客ではないことにようやく気づくと、途端に興味をなくしてぞんざいに言い放った。 「教えてくれれば、この砂嵐を止められるかもしれない、と言ったら?」  青年は勿論、大真面目に言った。  が、相手も勿論笑い飛ばした。 「お前こそ、寝言を言うのもほどほどにしろよ! お前なんか家に入れるんじゃなかった、出てけ!」 「まぁまぁ」  二度目の雷に慣れてきたのか、青年は少し笑顔になった。そして、今度は居直った彼の方が、さらりと言った。 「こんなことが冗談で言えないだろ。まぁ、暇潰しだと思って話してくれないか?」 「誰が暇だって? さっさと出て行け!」  自分から呼んでおいて、身勝手もいいところだ。  だが、青年は何も言わずにその部屋を出た。
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